こんにちは。
junonoです。
今回は、街全体が世界遺産に指定されているスペインの城郭都市、セゴビアを訪ねます。
マドリードから高速鉄道で30分。
先史時代からケルト、ローマ、西ゴート、そしてイスラム勢力の支配を経て、カスティーリャ王国の宮廷として黄金期を迎えた街。
至る所にその歴史が息づいています。
この街の象徴は、強固な花崗岩で築かれた歴史的建築物たち。
積み木のように石を積み重ねただけで2000年間ただずんでいる巨大なローマ水道橋。
石のトゲトゲが付いた無骨な家。
コロンブスを支援したイザベル女王が戴冠式を行ったアルカサル(城)。
とんがり屋根が美しく、レース編みのドレスを纏ったような外壁で、ディズニー映画「白雪姫」のお城のモデルにもなりました。
そんなセゴビアの歴史の象徴、花崗岩が造る3つの傑作を紹介します。
スペイン、セゴビアのローマ水道橋■石の重みだけで自立する神業

スペインのセゴビア旧市街の入り口で圧倒的な存在感を放つのが、約2000年前に造られたローマ水道橋です。
セゴビア観光局の公式サイトによると、紀元1世紀頃に建設されて、20世紀に入ってからも現役で水道として使われていたという驚きの耐久性。
水源からの水路は、グアダラマ山脈から終点のアルカサル(城)まで、全長約16.2km。
そのうち、最もドラマチックなのが市街地に架かるこの水道橋の巨大アーチです。
全長813m、最高の高さは約28mもあります。
驚異の「積み木」構造

このローマ水道橋の凄さは、わずかな違いもなく精密にカットされた2万個以上の花崗岩を接着剤(モルタル)なしで積み上げただけという点。
凹凸でつなぐレゴブロックのような仕掛けもなし。
切り出された石をただ積み木のように重ねてあるだけで、それぞれの重みだけでお互いを支え合い、奇跡のバランスで立ち続けています。
まさに神業。
あまりの非現実的な造形に「悪魔が一晩で造った」という伝説も残っています。
アーチの部分が落ちてこないのが、とても不思議です。
下層の柱部分を断面にすると、2.4x3.0m程度の長方形で、上層の柱の頂部は 1.8x2.5m 程度。
それほど太くはなく、押したら倒れてもおかしくないように見えました。
それなのに、嵐などの自然に耐えて、ただずみ続けているのも驚きです。
歴史を繋ぐ修復の跡

アーチ上部の色が少し異なる部分は、11世紀の戦乱で故意に破壊された箇所を、15世紀にイザベラ女王とフェルナンド2世が5年かけて修復した跡。
中世の修復部分は綻びなどがみられますが、2000年前のオリジナル部分は揺るぎないように見えます。
破壊されていた約400年間は、現場で劣化した木材が見つかっていることから、仮設の木造水路を架けてこの水道を維持し続けたという説もあります。
とにかく、人が壊さなければ、壊れない。
石という素材の永遠性と、古代ローマの技術力には、ただ圧倒されるばかりです。
山脈の恵み、2000年越しの「天然水」

ローマ水道橋を伝って水源へと向かって歩いていくと、やがて濾過小屋を通り過ぎて、観光客がいない公園へと続き、水道は地下へと入っていきました。
ちなみに、長い水路の全行程16.2kmは、たった1%以下の高低差を保ち続けています。
それは、目で見ても水平にしか見えないのに、水が意思を持っているかのように静かに水路を流れ続ける魔法のような傾斜ではないでしょうか。
現代のエンジニアたちも、その技術に驚いているようです。
この水道の地上と地下の分かれ目では、水が湧き出ていました。
説明はなかったものの、水道橋マークのついた柱があったので、この水はセゴビアの人々が昔から飲んでいた水だと思われます。
源泉は、山と岩石から出たミネラルが含まれているそうです。
これは六甲やエヴィアンのようなレベルの天然水ではないでしょうか。
しかも、源泉かけ流し!なんと贅沢な。
濾過していないお水だと思われますが、地元民らしき方が美味しそうに飲んでいました。
真似して飲んでみると、ひんやりとしていて、爽やかな気分になりました。
かつてのローマ人と同じお水を飲んだと思うと、歴史ロマンがあってとても感慨深いです。
カサ・デ・ロス・ピコス:壁一面に「棘」を持つ貴族の館

こちらは、壁一面にピラミッド型の突起が張り巡らされた「カサ・デ・ロス・ピコス(棘の家)」。
15世紀に建てられた旧貴族の館で、現在は美術学校として使用されています。
かなり無骨で攻撃的なデザイン。この壁は16世紀に施されたらしいです。
一説では「城門近くに位置するため要塞としての威厳を持たせた」と言われていますが、その真意は謎に包まれています。
500年以上経った今も、花崗岩の鋭いエッジはそのままで、新築と言われても違和感がないくらい綺麗でし
アルカサル:レースを纏ったような「童話のお城」

こちらは、ディズニー映画『白雪姫』の城のモデルと言われているアルカサル(城)。
レコンキスタを完遂させて800年続いたイスラム勢力を追い出した宗教統一、コロンブスの新大陸到達支援、結婚と統治によるスペイン統一を果たした、あのイザベル女王が戴冠式を行ったお城です。
現在は、武器や防具、軍事資料などを展示する博物館になっています。
もともとは古代ケルト人が造ったお城で、イスラム系やキリスト教系の歴代王国が改築を重ねて現在に至っているとのこと。
花崗岩でできていて、造形は軍艦に似ています。
厳めしい要塞だったようですが、16世紀に改築とお化粧直しをして、今のような華麗な姿になったようです。
とんがり屋根と優美なシルエット

童話に出てきそうな、とんがり屋根のタワー。
天然のスレートが使われています。
高さ約80メートルにおよぶ巨大な直方体の塔は、その優美な見た目と違って牢獄として使われていたこともあるのだそうです。
壁を彩る「エスグラフィアド」のレース模様

レース編みのドレスを纏ったようで、繊細で美しい!
手前と後ろでは模様が違いますね。
このお城の外壁は「エスグラフィアド」と呼ばれる幾何学模様の装飾が施されています。
色の異なる二層の漆喰を塗り重ね、乾ききる前に型紙でデザインを描き、上の層の表面を削って立体的な模様を浮き立たせる。
16世紀から定着したセゴビア伝統の手作業の左官技術で、もともとはイスラム系の職人がもたらした伝統技法が起源だとのこと。
セゴビアの街を歩けば、エスグラフィアドの装飾で溢れています。
色合いはアーシーなものが多いです。

こちらは、私が「いいね♥」と思った、街中で見かけたエスグラフィアドの模様。
よく見ると、模様の形が微妙に不揃いで、手作業でひとつひとつ丁寧に作られた感じが伝わってきます。
これだけ細かい模様を描いて彫るには、かなり大変な作業に違いありませ

ふと目を向けると、ローマ水道橋の低い箇所のアーチの向こう側に、美しいエスグラフィアドの壁が見えました。
セゴビアの二つの象徴が共演する、この街を凝縮したような光景。
長く風雪に耐えてきた花崗岩の建物の強さと、そこに刻まれた人間の知恵に感銘を受けた建物巡りの街歩きでした。
それでは、また次回に!

